目次 - 聞書第二 〇二〇三 苦勞を見た者でないと根性が据わらぬ、若い中に苦勞せよ 〇二〇四 組討やはら角藏流、端的當用に立つのが流儀、戀は忍戀 〇二〇五 多久美作、嫡子長門を慕はする爲、熊と無理無情に家中に當る 〇二〇六 相手の氣質を呑込んで會釋し、議論しても遺恨を残すな 〇二〇七 北山朝陽軒と宗壽庵─了為、行寂、雪門、海音、岩水、各和尚 〇二〇八 夢が正直のためし、勇氣がすわると夢中の心持が替わる 〇二〇九 先づ篤と身命を主人に奉り、内に智仁勇の三得を備えよ 〇二一〇 淵瀬を心得て渡れ、御意に入りたいと努むるのは見苦しい 〇二一一 武士は草鞋作り習へ、一理外へは一人一升の兵糧を持て 〇二一二 丁子袋を身に附けると寒氣に當らぬ、血留には芦毛馬の糞 〇二一三 結構者はずり下る、強みにてはければならぬもの 〇二一四 主人に心置かるヽ様にするが忠節、十年骨を碎けば確となる 〇二一五 火事場掛合は敵方や逆心者警戒の爲、御法事堪忍番の心得も同様 〇二一六 豫て養生すれば病氣は出ぬ、慈悲の諫言意見も平素にせよ 〇二一七 御用に立ち度しと思ふ奉公人は其の儘引上げ召使はれる 〇二一八 悪事は我が身にかぶり、上の批判は申出でぬと覺悟せよ 〇二一九 端的只今の一念より外はない、「この一念」に忠節備る 〇二二〇 時代の風がある、昔風や當世風のみではいかぬ、時代に順應せよ 〇二二一 工夫修業を超越し、世間並に主を歎き奉公に身を入れよ 〇二二二 當念を守つて氣を抜かず勤め一念々々と過ごすまで 〇二二三 附紙の仕様、弔状其の外凶事包物折方のいろいろ 〇二二四 氣力強き者はそげ廻る、勇氣は別事、死狂ひに氣力は入らぬ 〇二二五 下々迄の爲になる様にするが上への奉公、磔も御慈悲 〇二二六 殿様の御供も唯不斷の枕一つ、殿様と一所に居れば濟む 〇二二七 山本常朝、内證支へ有りのまゝ曝け出して銀子拜領 〇二二八 鍋島直茂一流の軍法、その場に臨んで一言で埒明く 〇二二九 家康は大勇氣の大將、討死の士卒一人も後向かず 〇二三〇 今時の者無氣力なのは無事故、何事かあれば骨々となる 〇二三一 仕舞口が大事、客人の歸る自分など名残盡きぬ心得が肝要 〇二三二 萬事眞實一つで行けば濟む、奉公は差出た事が第一に悪い 〇二三三 何もなき所が色即是空、そこに萬事を備ふるが空即是色 〇二三四 武勇と少人は我は日本一と大高慢でなければならぬ 〇二三五 思死に極むるが戀の極至、主従の間もこの心で濟む 〇二三六 慰みにも心を附けよ、腰折とは武家にては言ふまじき事 〇二三七 その場をはづしては口は利けず、當座々々の働きが肝要 〇二三八 山本常朝、健康の爲、廿歳前後七年間不婬、遂に藥を飲まず 〇二三九 貴人や老人の前で知つたか振りは遠慮せよ、聞きにくい 〇二四〇 花見提重は歸りには踏み捨てる、萬づ仕舞口が大事 〇二四一 武士は武勇に大高慢で死狂ひの覺悟が肝要、よろづ綺麗に 〇二四二 朋輩に席を越され、氣にせぬもするも時により事による 〇二四三 「水增されば船高し」むつかしき事に出會ふ程一段すゝむ心 〇二四四 書物は残るもの、手紙も向ふで掛物になると思ひ、嗜みて書け 〇二四五 風體口上手跡で上手を取る、やすき事を人が油斷する 〇二四六 人間は何とよくからくつた人形ではないか、明年の盆には客 〇二四七 牛馬に出會ふ時、牛は常態では突かず、馬は跳ぬるのではない 〇二四八 奉公人には良き手本が入る、若い者が精出さぬのは油斷 〇二四九 「只今がその時、その時が只今」二つに合點してはならぬ 〇二五〇 その時が只今、武士道は毎朝毎朝死習ひ切れきれて置く事 〇二五一 男仕事は日頃の心得で仕果せる、そこに軍神の加護がある 〇二五二 殿中の堪忍と詞の働き、其の場を忍んで後に埒を明けよ 〇二五三 奉公は何卒仕遂げたいと思ふ内がよい、一生仕遂げたいと思へ 〇二五四 首打落されても一働き、武勇の爲には大悪念を起こせ 〇二五五 大人は清浄心から名言が出、下々は汚れて詩歌も出來ぬ 〇二五六 正徳三年八月三日夜、田代又左衛門夢中騒動の場の事 〇二五七 死は足.許に來る、夢中の戯れと油斷せず精を出して早く仕舞へ 〇二五八 不慮の災難に逢うた人には却つてよき仕合せと激励せよ 〇二五九 佞悪の者は人の非を言觸らし陥れて慰む、皆人覺悟すべき事 〇二六〇 欠伸嚏はすまいと思へば一生せぬ、嗜み事は若い内に書き附けよ 〇二六一 帯の仕様、上下附は鍋島流が第一、帯の結び目をはさむ事 〇二六二 山崎蔵人の金言「見え過ぐる奉公人は悪ろし」─道樂は禁物 〇二六三 君臣の間は忍戀のやうにあれ、奉公の大意は理非の外 〇二六四 御側の奉公はぶらぶらと年を重ね、自然と御用に立つ様に 〇二六五 何よりも唯主君の御一言が忝くて腹を切る志は起こるもの 〇二六六 地獄にも落ちよ神罰にも當れ、主人に志立つる外はない 〇二六七 客に行つて差合ひを言はれてから歸るのは追立てられるもの 〇二六八 寫し紅粉を懐中して酔覺や寝起など顔色悪い時は直すがよい 〇二六九 相良求馬、鍋島光茂の歌道執心は御家長久の基と辯疏 〇二七〇 中野又兵衛先祖の物語、下情が上達せぬと不和が出來る 〇二七一 他人の家で物を失うた時、不用意に言出して主人に恥かゝすな 〇二七二 挨拶は一座を見計つて人の氣に障らぬ様に、國家の事は勇猛に 〇二七三 談合事はまづ一人に、大事の相談は密かに無関係の人に 〇二七四 兵動左仲奇特にも藝敵の正珍に連歌の宗匠を譲る 〇二七五 湛然和尚曰く、「風鈴を懸けるのは風を知つて火の用心する爲」 〇二七六 畳の上で武勇を顯す者でないと戦場へも選び出されない 〇二七七 剛と臆とは平生當つて見ては別らぬ、別段にあるもの 〇二七八 何氣なく思はれては奉公できぬ、大事の奉公は一心の覺悟から 〇二七九 山本常朝、隠居後も常に御家の事を思ひ、これを語る毎に落涙す 〇二八〇 生々世々御家中に生まれ出で、御家は我一人で抱留める 〇二八一 湛然和尚曰く「常に氏神と心を釣り合うて居れ、親同然で運が強い 〇二八二 佐賀に生れて日峯様を拜まぬは疎略、直茂公生前にも願をかけた指南の由。 〇二八三 日拜は血戦の運命を祈るため、穢を嫌ふ神ならば詮なし 〇二八四 大難大變にも一言、仕合せの時にも一言、此の一言に工夫せよ 〇二八五 上座から末座に下り會釋して復席、豫て教訓の禮儀 〇二八六 寄親は兼々組の者に振る舞ひ、會釋の心入あるべき事 〇二八七 人間一生好いた事をして暮すべし、但し聞き様では害になる 〇二八八 現實の事は夢で知れる、夢を相手に精々勵むがよい 〇二八九 懺悔は器物の中の水をこぼす様なもの、改むれば跡は消える 〇二九〇 我が長けを知り、非を知つたとて自慢するな、自己を知るは難い 〇二九一 人の威は外に顯れる、畢竟は氣をぬかさず正念な所が基 〇二九二 悪事の引合ひは貪瞋痴、吉事の引合ひは智仁勇に洩れず 〇二九三 奉公人の心入は時代々々で變る。或時は國家を治めて上げよ 〇二九四 下賤から高位に登つた人はその徳を貴んで一入崇敬せよ 〇二九五 山本前神右衛門、常朝七歳の時より武者草鞋で寺參りさす 〇二九六 主君にも少しは隔てられるがよい、腰巾着では働かれぬ 〇二九七 物識が差合ひ、平生の事にも案内知つて障りになる事もある 〇二九八 端的濟まぬ事は埒明かぬ、左足の一歩で鐵壁も踏破れ 〇二九九 智慧利發ほどきたないものはない、眞實さへあれば立行く 〇三〇〇 贔負があつては口がきけぬ、何の引きもないが奉公はしよい 〇三〇一 些細な事に念を入れて話す人には大方その裏がある 〇三〇二 何事も人より一段高き理を見附けよ、相手をみて理を言へ 〇三〇三 飢死んでも殿様の爲には神佛にも見向かず朽ち果てよ 〇三〇四 世上の噂話にも物言ひを慎め、口故に敵を持ち遺恨も出來る 〇三〇五 人の事は譽むるも似合はぬ、我が丈を知つて修行に精を出せ 〇三〇六 徳ある人はゆとりがあり、小人は静かな所がなくがたつき廻る 〇三〇七 夢の世とはよき見立、悪夢を見て覺めたい事もある 〇三〇八 何事も眞實でないと效がない、智慧ある人は智慧の害に陥る 〇三〇九 裁判や論争はきたな勝ちよりも見事な負けがよい、相撲の様なもの 〇三一〇 人を悪むは慈悲なき故、慈悲門に括り込めば當り合ふ事がない 〇三一一 生噛りは知りだてをする、よく知ると知つた振りはせぬ 〇三一二 奉公人の身上は主人の物、大事がつて惜しむべきやうはない 〇三一三 悪固まりに一家を立つるな、我が非を知つて探促するが即ち道 〇三一四 訪問は通じてから行くがよい、長座の客にも不會釋するな 〇三一五 牛の角を直すとて牛を殺すな、生駒將監の忠義立て主家を崩す 〇三一六 善事も過ぎると悪い、説法教訓も言ひ過ぎると却つて害になる 〇三一七 邪智深き佞人は我が立身の才覺のみ、それを見抜く事は難い 〇三一八 山本神右衛門曰く、「娘の子はそだてぬがよし。名字に疵をつけ、親に耻をかゝす」 〇三一九 恵芳和尚、鍋島安藝の「武邊は氣違」を佛道に應用す 〇三二〇 茶の湯の本意は六根を清くする爲、全く慰み事ではない 〇三二一 人の悪事も慈悲門に括り込み、よくせねば置かぬと念願せよ 〇三二二 意地は刀の様な物、砥ぎすまして鞘に納め置き、時々出して見よ 〇三二三 小利口では濟まぬ、切るゝ所は早く据つて突つ切れ 〇三二四 「大儀ながら御國を荷うて上げ候へ。」この一言が忘れられぬ 〇三二五 大事の家中を不和にしてはならぬ、喧嘩や仲直りは仕様がある 〇三二六 牛島源蔵京都留守居役の事、物は言ひ様で理が聞こえる 〇三二七 某々和尚追院の時の事、我が身は見えぬ所があるもの 〇三二八 小々姓仲間船中の氣傳、廻船舸子を造作なく追散らす 〇三二九 悪事も破れぬ仕様がある、金銭の事で腹切らせるは残念 〇三三〇 諫言が入れられず殿様悪事の時は味方して世に隠せ 〇三三一 不忠不義一人も無く、悉く御用に立つるが大忠節大慈悲 〇三三二 時代と共に人の器量も下がる、一精出せば圖抜けて御用に立つ 〇三三三 人の癖は似我蜂の様に精を出して直せば直る、養子も教へ様 〇三三四 崩るゝ御家を抱留むると思へ、人の悪事を恨まぬがよい 〇三三五 氣力さへ強ければ詞も行ひも自然と道に叶ふ、されど心が第一 〇三三六 我が知つた事も功者の話は幾度でも深く信頼して聞くべきもの 〇三三七 主君の命にもだゞを踏まねばならぬ事がある、畢竟主君の爲 〇三三八 祖先の御加護で、鍋島家は日本に並ぶものなき不思議の御家 〇三三九 鍋島家は浪人の他國出を許さぬ、かく主従の契深い家中はない 〇三四〇 捨者も仕盡くした者でないと用に立たぬ、窮屈では駄目 〇三四一 名利の眞中、地獄の眞中に駈入りても主君の御用に立て 〇三四二 至極の忠節は主を諌め國を治むる事、家老になるも其の爲