聞書第二 〇二二五 下々迄の爲になる様にするが上への奉公、磔も御慈悲 原文 一、「奉公は、色々心持これありと相見え、大體にては成り兼ね申すべし。」と申し候へば、「左様にてなし、生附の分別にて濟むもの也。勝茂公よく御撰みなされたる御掟に合はせて行く迄也。安き事也。其の中、御家中下々迄の爲になる様にと思うてするが、上への奉公也。不了簡の出頭人などは、上の御爲になるとて、新儀を企て、下の爲にならぬ事は構はず、下に愁ひ出來候様に致し候。これは第一の不忠也。御家中下々、皆殿様のものにて候。又上よりは御慈悲にて濟むもの也。其の時は磔も御慈悲になる也。」
聞書第二 〇二二五 下々迄の爲になる様にするが上への奉公、磔も御慈悲 現代語訳 一、「奉公は、色々な心掛けが有ると見えて、大体では上手く行かない。」と言ったところ、「そうではなく、生まれつきの分別で済むものである。勝茂公がよく選別なされた掟に合わせていくだけだ。簡単な事だ。その内に、御家中や下々までの為に成る様にと思ってするのが、上への奉公だ。了見のない出頭人などは、上の為に成ると言って、新義を企て、下の為に成らないと言う事には構わず、下々が悲しむ様な事をする。これは第一の不忠である。家中、下々、皆、殿様のものである。また、上からは慈悲を掛けるだけでいい。その時は、磔も慈悲になるのだ。」