聞書第二 〇二〇六 相手の氣質を呑込んで會釋し、議論しても遺恨を残すな 原文 一、人に出會ひ候時は、その人の氣質を早く呑込み、それぞれに應じて會釋あるべき事也。その内、理堅く強勢の人には隨分折れて取合ひ、角立たぬ様にして、間に相手になる上手の理を以て言ひ伏せ、その後は少しも遺恨を残さぬやうにあるべし。これは胸の働き、詞の働き也。何某へ和尚出會ひの意見、口達あり。
聞書第二 〇二〇六 相手の氣質を呑込んで會釋し、議論しても遺恨を残すな 現代語訳 一、人に出会った時は、その人の気質を早く飲み込み、それぞれに応じて対応するべきだ。その内、理屈っぽく強情な人には随分と折れて取り合い、角が立たない様にして、その間に相手になる様な、うわての理屈で言い伏せて、その後に少しも遺恨を残さぬ様にするべきだ。これは心の働き、言葉の働きだ。何某が和尚に初対面の前に意見した事、口達であった。