聞書第一 〇二〇二 知れぬ事は知れぬまゝに、たやすく知れるのは浅い事 原文 一、昔の事を改めて見るに、説々これあり、決定されぬ事あり。それは知れぬ分にて置きたるがよき也。實教卿御話に、「知れぬ事は知るゝ様に仕たるものがあり、又自得して知るゝ事もあり、又何としても知れぬ事もあり、是が面白き事也。」と仰せられ候。奥深き事也。甚秘廣大の事は知れぬ筈也。たやすく知るゝは浅き事也。
聞書第一 〇二〇二 知れぬ事は知れぬまゝに、たやすく知れるのは浅い事 現代語訳 一、昔の事を改めて見ると、諸説があり、決定できない事がある。それは知る事が出来ない事として置いておくのが良い。実教卿の御話に、「知る事が出来ない事は、知れるように出来るものがあり、また自分で悟る事が出来るものもあり、またどうしても知る事が出来ない事もあり、これが面白いのだ。」と仰せられた。奥の深い事だ。甚秘広大な事は知る事が出来ないはずだ。簡単に知る事が出来るのは浅い事だ。