聞書第一 〇一七二 一日の事を案じて見れば云ひ損ひ仕損ひの無い日は無い 原文 一、若き時分、残念記と名付けて、其の日其の日の誤を書附けて見たるに、二十、三十なき日はなし。果てもなく候故、止めたり。今にも一日の事を寝てから案じて見れば、、云ひそこなひ、仕そこなひのなき日はなし。さても成らぬもの也。利發任せにする人は、了簡におよばざること也。
聞書第一 〇一七二 一日の事を案じて見れば云ひ損ひ仕損ひの無い日は無い 現代語訳 一、若かった頃、残念記と名付けて、その日その日の過ちを書き附けてみたところ、二十、三十件ない日がなかった。きりがないので止めた。今でも一日の事を眠る前に考えてみると、言い損ない、し損ないがない日は無い。上手く行かないものだ。利発なひとにはわからぬ事だ。