聞書第一 〇一四四 「禮に腰折れず恐惶に筆つひえず」別隔てなく禮々しきがよい 原文 一、「禮に腰折れず恐惶に筆つひえず。」と申す事、親神右衛門常に申し候。當時の人は禮がすくなき故、うつかりとも見え、風體悪しく候。別隔てなく禮々しきがよし。又長座の時は、始と終に深く禮をして、中は座の宜しきに随ふべし。相應に禮をすると思へば不足にあるなり。近代の衆は無禮調子早になりたり。
聞書第一 〇一四四 「禮に腰折れず恐惶に筆つひえず」別隔てなく禮々しきがよい 現代語訳 一、「礼に腰は折れずかしこまっても筆はついえない」と言う事を、親である神右衛門が常に言っていた。当時の人は、礼がすくないので、うかつな風に見えて、風体も悪い。別け隔てなく礼々しくするのが良い。また、長座の時は、始めと終わりに深く礼をして、中ほどでは座の流れに従うようにする。相応な礼をしようとすれば不足してしまう。近代の衆は無礼な調子になってしまっている。