聞書第一 〇一二二 何の能があつても人の好かぬ者は役に立たぬ、人に好かれよ 原文 一、少し理窟などを合點したる時は、頓て高慢して一ふり者と云はれては悦び、我今の世間には合わぬ生附などと云ひて。我が上あらじと思ふは、天罰あるべき也。何様の能事持ちたりとも、人の好かぬ者は役に立たず。御用に立つ事、奉公する事には好きて、随分へりくだり、朋輩の下に居るを悦ぶ人の心入れの者は、諸人嫌はぬもの也。
聞書第一 〇一二二 何の能があつても人の好かぬ者は役に立たぬ、人に好かれよ 現代語訳 一、少し理屈などに納得した時は、やがて高慢になって、器量のある者と言われて歓び、自分は今の世の中には合わない生まれつきだなどと言って、自分より上に人はいないと思うのは、天罰が下るべき事だ。何様の才能や能力を持っていたとしても、人に好かれぬ者は役に立たない。御用に立つ事、奉公する事を好んで、随分と謙り、朋や先輩後輩の下に居る事を喜ぶ人の心意気の者は、だれも嫌わないものだ。