聞書第一 〇一二一 分別も久しくすればねまる、武士は七息に分別せよ 原文 一、古人の詞に七息思案と云ふことあり。隆信公は、「分別も久しくすればねまる。」と仰せられ候。直茂公は、「萬事仕だるきこと十に七つ悪し。武士は物事手取早にするものぞ。」と仰せられ候由。心氣うろうろとしたるときは、分別も埒明かず。なづみなく、さわやかに、りんとしたる氣にては、七息に分別すむもの也。胸すわりて、突つ切れたる氣の位也。口傳。
聞書第一 〇一二一 分別も久しくすればねまる、武士は七息に分別せよ 現代語訳 一、古人の言葉に七息思案と言う言葉がある。隆信公は、「物事の判断も長く時間を掛ければ眠たい。」と仰せられた。直茂公は、「万事だらだらした事の十のうち、七は上手く行かない。武士は物事を手っ取り早くするものだ。」と仰せられたとの事。心気がウロウロとしている時は、判断に時間がかかって埒が明かない。すまして、さわやかに、りんとした気である時は、七息する間に判断が済む。胸を据えて、吹っ切れた気位である。口伝。