聞書第一 〇一一七 武士は後れになることを嫌へ、假初にも臆病な事をいふな 原文 一、武士は萬事に心を附け、少しにても後れになる事を嫌ふべき也。就中物言ひに不吟味なれば、「我は臆病也。其の時は迯げ申すべし、おそろしき、痛い。」などといふことあり。ざれにも、たはぶれにも、寝言にも、たは言にも、いふまじき詞なり。心ある者の聞いては、心の奥推しはかるもの也。豫て吟味して置くべき事也。
聞書第一 〇一一七 武士は後れになることを嫌へ、假初にも臆病な事をいふな 現代語訳 一、武士はあらゆる事に気を付け、少しでも後れを取る事を嫌うべきだ。とくに物言いに不吟味であれば、「私は臆病だ。その時には逃げるだろう、おそろしい、痛い。」などと言う事がある。ふざけてでも、戯れにも、寝言にtも、たわ言にも、言ってはいけない言葉だ。心ある者は聞けば心の奥を推し量るものだ。あらかじめ吟味しておくべき事だ。