聞書第一 〇一一三 武士道は死狂ひ、分別が出來ると早後れる、忠孝も此の内 原文 一、「武士道は死狂ひなり、一人の殺害を數十人して仕かぬるもの。」と、直茂公仰せられ候。本氣にては大業はならず、氣違ひになりて死狂ひするまで也。又武士道に於て分別出來れば、早後るゝ也。忠も孝も入らず、武道に於ては死狂ひ也。この内に忠孝は自ら籠るべし。
聞書第一 〇一一三 武士道は死狂ひ、分別が出來ると早後れる、忠孝も此の内 現代語訳 一、「武士道は死狂いであり、そのような者一人の殺害は数十人をもってしても仕かねるものだ。」と直茂公は仰せられた。本気になっても大業を為すことはできないので、気違いになって死狂いするだけだ、また、武士道に於いて、分別できる状態では後れを取ってしまう。忠も孝も関係なく、武道に於いては死狂いだ。その内側に、忠孝は内包されるのである。