聞書第一 〇一一一 勘定者はすくたるゝもの、死ぬ事を好かぬ故すくたるゝもの 原文 一、勘定者はすくたるゝ者也。仔細は、勘定の損得の考するものなれば、常に損得の心絶えざる也。死は損、生は得なれば、死ぬる事を好かぬ故、すくたるゝもの也。又學問者は才智辯口にて、本體の臆病欲心などを仕かくすもの也。人の見誤る所也。
聞書第一 〇一一一 勘定者はすくたるゝもの、死ぬ事を好かぬ故すくたるゝもの 現代語訳 一、勘定者はきたない者だ。その理由は、勘定は損得を考えるものであり。常に損得を考える心が絶えない。死は損、生は得と考えるので、死ぬことを好まなので、穢いのだ。また、学問者は、才智や弁口で、本当は持っている臆病や欲心などを隠している。人が間違いやすい所だ。