聞書第一 〇〇九四 人の病気や難儀の時大方にする者は腰抜、不仕合せには一層親切に 原文 一、「人の心を見んと思はゞ煩へ。」と云ふことあり。日頃は心安く寄合ひ、病氣又は難儀の時大方にする者は腰抜け也。全ての人の不仕合せの時別けて立入り、見舞附届仕るべき也。恩を受け候人には、一生の内疎遠にあるまじき也。斯様の事にて、人の心入は見ゆるもの也。多分我が難儀の時は人を賴み、後には思ひも出さぬ人多し。
聞書第一 〇〇九四 人の病気や難儀の時大方にする者は腰抜、不仕合せには一層親切に 現代語訳 一、「人の心を見ようと思うのならば、病気を患え。」と言う諺がある。日頃は親しく付き合い、病気や、問題が起こった時にいい加減な事をするのは腰抜けだ。全ての人が不幸せの時に特に立ち入って、見舞うべきだ。恩を受けた人には一生、疎遠にしてはならない。この様な事で、人の心入れは見えるものだ。多くには、自分が問題を抱えた時は人を頼り、その後で思い出しもしない人が多い。