聞書第一 〇〇五九 一家を立つるな、常に我が非を知つて修行する所に道はある 原文 一、一世帯構ふるがわろきなり。精を出して見解などあれば、早濟まして居る故早違ふ也。尤も精を出して、先づ種子は確に握つて、偖それが熟する様にと修行する事也。一生止むる事はならず。見附けたる分に、其の位叶ふ事は思ひもよらず、只これも非也、非也と思うて、何としたらば道に叶ふべきやと一生探促し、心を守りて打置く事なく、修行仕るべき也。この内に即ち道はある也と。
聞書第一 〇〇五九 一家を立つるな、常に我が非を知つて修行する所に道はある 現代語訳 一、一世帯を構えるのは悪い事だ。精を出して得た見解などがあれば、済んだ気になってしまうから間違うのだ。まず種は確かに握って、さてそれが熟するようにと修業するのだ。一生止めてはいけない。見つけた答えに、その程度で叶ったとは思わずに、ただこれも駄目だ、駄目だと思って、どうしたら道に叶うのかと一生探索し続け、、心を保って留まることなく、修業するべきだ。即ち、この内に道はある。