聞書第一 〇〇五六 逼迫にさへあれば疵は附かぬ、富貴になりたがるが心が疵 原文 一、奉公人に疵の附く事一つあり。富貴になりたがる事也。逼迫にさへあれば疵は附かぬ也。又何某は利口者なるが、人の仕事の非が目にかゝる生附也。この位にては立ちかぬるもの也。世間は非だらけと、始めに思ひこまねば、多分顔附が悪しくして人が請け取らぬもの也。人が請取らねば、如何様のよき人にても、本義にあらず。これも一つの疵と覺えたるが由。
聞書第一 〇〇五六 逼迫にさへあれば疵は附かぬ、富貴になりたがるが心が疵 現代語訳 一、奉公人に疵がつくことが一つある。富や地位を欲しがる事だ。逼迫さえしていれば疵はつかない。また何某は利口者だが、人の仕事の非が目につく性分だ。この段階では役に立ちかねる。世間は非だらけだと、始めに思い込まなければ、多分顔つきが悪くなり人に受け入れられない。人に受け入れられなければ、如何に良い人でも、本領を発揮できない。これも一つの疵であると覚えておくようにとの事。