聞書第一 〇〇四八 曲者志田吉之助の戯れ、 生きたまがし を聞き誤るな 原文 一、武士道功者書に、功者の武士は、せざる武邊に名を取る道ありと書かれ候。後々の誤りこれあるべく候。「も」の字一字加へて見申し候由。又志田吉之助、生きても死にてものこらぬ事ならば、生きたがましと申し候。志田は曲者にて、戯れに申したる事にて候を、生立者共聞き誤り、武士の疵に成る事を申すべくやと存じ候。此の追句に、喰はうか喰ふまいかと思ふものは喰はぬがよし、死なうか生きようかと思ふ時は死んだがよしと仕り候。
聞書第一 〇〇四八 曲者志田吉之助の戯れ、 生きたまがし を聞き誤るな 現代語訳 一、武士道功者の書に、巧者の武士は、行っていない武辺に名を上げる道がある、と書かれている。後々に誤って伝わるかもしれない。「も」の字を一文字加えて見ると分かる。また、志田吉之助は、生きても死んでも後に残らないなら、生きていた方がましだと言った。志田は強者であり、ふざけて言った事だが、若者たちが誤解して、武士の疵になる事を言うものだと思うかもしれない。志田吉之助は付け加えて、食うか食うまいかと思うものは食わないのが良く、死のうか生きようかと思う時は死んだ方が良いと言っている。