聞書第一 〇〇四一 人は得意な方に老耄するもの、老人は他出せぬがよい 原文 一、何某事老耄かと思はるゝ也。方々招請に參られ心入に成り、話など致され候由。此の前數年の内も、人の爲になる事ばかりを案じ、極々の奉公好きに也。それ故一かど御用に立たれ候。人は得方に老耄する者なれば、奉公老耄、人の爲になりても老耄はあぶなき也。老人は他出せぬが重くして、しまりよき也。
聞書第一 〇〇四一 人は得意な方に老耄するもの、老人は他出せぬがよい 現代語訳 一、何某の事を耄碌したのではないかと思う。方々の招待に応じて親しくなり、話をなさったそうだ。この数年の内にも、人の為になる事ばかりを深く考え、この上ない奉公好きだった。そのため、目立って御用に立たれていた。人は得意な方に耄碌する物なので、奉公耄碌、人の為になっても耄碌は危ない。老人は他に出さないのが威厳が出て、収まりが良い。