聞書第一 〇〇四〇 今時の利口者は智慧で紛らかす、純なる者は素直である 原文 一、「心の問はゞいかゞ答へん」と云ふ下の句程有難きはなし。大かた念佛に押し並ぶべしと思はるゝ。先は人の口に多くとゞまりてある也。今時の利口者と云ふは、智慧にて外をかざり紛らかす事ばかりをする也。それ故鈍なる者には劣る也。鈍なる者は直也。右の下の句にて、心を究めて見れば隠所はなき也。よき究役也。此の究役に逢うて恥ずかしからぬ様に、心を持ち度き也。
聞書第一 〇〇四〇 今時の利口者は智慧で紛らかす、純なる者は素直である 現代語訳 一、「心の問わば いかが答えん」と言う下の句ほど有り難いものはない。大方、念仏に肩を並べるだろうと思われる。この先も人に語られ続けるだろう。今時の利口者と言うのは、知恵で外を飾って紛らわす事ばかりをする。それゆえ、鈍なるものには劣る。鈍なるものは正直だ。右の下の句にて、心を見究めれば、隠しどころは無い。良い見究め役である。この見究めに逢っても恥ずかしく無い様に、心を保ちたい物だ。