聞書第一 〇〇二七 石井又右衛門の器量、馬鹿になつても本心を違へず 原文 一、石井又右衛門は大器量の者にて候。病氣出で馬鹿に成り申し候へども、一とせ御側仕組詮議の時、何某殿より又右衛門へ、御歌書方の事相尋ねられ候。又右衛門申し候は、「病氣以来いまの事さへ覺え申さず候。たとへ覺え居り候とも、殿様の人に言うなと仰せ付けられ候事を各々に申すべきや。まして覺え申さず候。」と申し候由。
聞書第一 〇〇二七 石井又右衛門の器量、馬鹿になつても本心を違へず 現代語訳 一、石井又右衛門は大器の者である。病気を患いボケてしまったが、ある年の御側仕組の詮議の時、何某殿より又右衛門へ、歌の書き方について尋ねられた。又右衛門は、「病気にかかって以来今の事さえ覚えられない。例え覚えていても、殿様から人に言うなと仰せ付けられていることを、各々に話すだろうか。ましてや覚えていない。」と言った。