聞書第一 〇〇二四 少々は見のがし聞きのがしある故に下々は安穩である 原文 一、何某、當時儉約を細かに仕る由申し候へども、宜しからざる事也。水至つて清ければ魚棲まずと云うことあり。藻がらなどのあるゆゑ、其の蔭に魚は隠れて、成長する也。少々は、見のがし聞きのがしある故に、下々は安穩なる也。人の身持ちなども、此の心得あるべき事也。
聞書第一 〇〇二四 少々は見のがし聞きのがしある故に下々は安穩である 現代語訳 一、何某が当時、事細かに倹約すると言っていたが、良くないことだ。水が清すぎれば魚が棲めないと言う事がある。藻くず等があるからこそ、その陰に魚が隠れて成長する。少々は、見逃し聞き逃しがあるからこそ、下々の安寧があるのだ。人の身持ちなども、この様に心得るべきである。