聞書第一 〇〇二二 近年は浪人切腹の跡も行捨てたり、國學も忘れられ勝ち 原文 一、日峰様御百年忌の時分、諸浪人残らず召出され度き事也。是が御亡者様の第一に御悦びなさるべき御法事にて候。其の段は我等請けに立つ也。さりながら儉約儉約にて、行き兼ね申すべく候。近年は、浪人切腹の跡などは行捨りに成り、手明槍浪人など取立これなき格の様に相成り候。國學御存じなき故、手明槍などを物頭仰付けられ候と也。
聞書第一 〇〇二二 近年は浪人切腹の跡も行捨てたり、國學も忘れられ勝ち 現代語訳 一、日峰様御百年忌の時、諸浪人残らず召し出されて欲しいことだ。これがなくなられた方が第一に喜びなさる法事のはずだ。その時は我らが請け負う。しかしながら、倹約、倹約で叶いそうにない。近年は、浪人、切腹の跡などは見捨てられ、手明槍浪人などは取り立てのない身分の様になってしまった。国学をご存じないので手明槍などに物頭を申し付けてしまう。