聞書第一 〇〇一一 山崎蔵人は一生仕舞物を取らず、これが奉公人の嗜 原文 一、山崎蔵人は一生仕舞物と名の附きたる物は取られず候。さて又町人の宅へ一生参り申されず候。誠に奉公人の嗜、斯様にこそありたく候。石井九郎左衛門も仕舞物仕られず候。近代の衆は仕舞物とさへいえへば我先にと望を掛け、町人などの所へは無理に押掛け振舞致させ、店棚に調物に参り候事を慰みなどと取りなし候事、風儀悪しく、侍の本意にあらずと存じ候。
聞書第一 〇〇一一 山崎蔵人は一生仕舞物を取らず、これが奉公人の嗜 現代語訳 一、山崎蔵人は一生、払い下げられた物はとらなかった。また町人の宅へ一生足を踏み入れたことがない。誠に奉公人の嗜みであり、このようにありたいものだ。石井九郎左衛門も払い下げられた物はとらなかった。近頃の衆は払い下げと言えば我先にと望みを掛け町人などの所へは無理に押しかけて振る舞いをさせ、店の棚に調べ物に行くことを楽しみにしているなどと言うことは、行儀が悪く、侍の本意ではない。