聞書第一 〇〇〇六 古人の金言仕業を覺ゆるも我を立てぬ爲、よく人に談合せよ 原文 一、古人の金言、仕業などを聞き覺ゆるも、古人の智慧に任せ、私を立つまじき爲也。私の情職を捨て、古人の金言を頼み、人に談合する時は、迦れなく悪事あるべからず。勝茂公は直茂公の御智慧をお借りなされ候。この事御話聞書にあり。有難き御心入也。又何某は弟數人家来にして召置き、江戸上方罷越し候時も召連れ、常住日日の公私の事を弟共と談合ある故、外れなしと聞き傳へ候也。
聞書第一 〇〇〇六 古人の金言仕業を覺ゆるも我を立てぬ爲、よく人に談合せよ 現代語訳 一、古人の金言、実績などを聞き学ぶのも、古人の知恵に任せ、私を立てないようにする為である。私の強情な考えを捨てて、古人の金言を頼り、人に相談するときは、はずれが無く悪事でなくなるだろう。勝茂公は、直茂公の御知恵を借りなされた。この事は御話聞書に記載がある。ありがたい心入れである。また、何某は弟数人を家来にし、召し置いて、江戸上方へ行った時も、召し連れて行き、常に公私の事を弟たちと相談したので、外れがなかったと聞き伝えられている。