聞書第一 〇〇〇五 我が智慧計りでは失敗する、叶わぬ時は智慧ある人に談合せよ 原文 一、我が智慧の一分の智慧計りにて萬事をなす故、私と成り天道に背き、悪事となる也。脇より見たる所、きたなく、手よわく、せまく、はたらかざる也。眞の智慧に叶ひ難き時は、智慧ある人に談合するがよし。その人は、我が上にてこれなき故、私なく有體の智慧にて了簡する時、道に叶ふもの也。脇より見る時、根づよく確かに見ゆる也。たとへば大木の根多きが如し。一人の智慧は突つ立ちたる木の如し。
聞書第一 〇〇〇五 我が智慧計りでは失敗する、叶わぬ時は智慧ある人に談合せよ 現代語訳 一、自分の知恵の一分の知恵ばかりですべてを為す故に、私と成って天道に背き、悪事となる。はたから見たところ、汚く、弱く、狭く、役に立たない。真の知恵に出ない時は、知恵のある人に相談するのが良い。その人は、自分の事では無いから、私無くありのままの知恵で考えて、道に叶う者となる。はたから見るとき、根強く、確かに見える。例えば、根の多い大木の様に。一人の知恵は突っ立った木の様な物だ。