聞書第一 〇〇〇一 武士道の大意を言下に答へ得る人は少ない、油断千萬の事 原文 一、武士たる者は、武道を心掛くべきこと珍しからずといへども、皆人油断と見えたり。その仔細は、「武道の大意は何と御心得候や。」と問掛けたる時、言下に答ふる人稀也。かねがね胸に落着きなきゆえゑ也。さては、武道不心掛の事知られたり。油断千萬の事也。
聞書第一 〇〇〇一 武士道の大意を言下に答へ得る人は少ない、油断千萬の事 現代語訳 一、武士たる者は、武道を心掛けるべき事は当然であると言えども、皆油断している様に見える。その仔細は、「武道の大意と何と心得なさるか。」と問いかけた時、すぐさま答える人は稀だ。かねてから胸に落ち着きがないからである。さては、武道の心掛けが足りないと知れる。決して油断しないことだ。